微酸性電解水(アクアサニター)の更なる可能性を探るにあたり、大分県看護科学大学の専門看護学講座 助産学研究室 樋口准教授のお力添えをいただいております。
樋口先生との出会い
弊社が微酸性電解水アクアサニターの製造を始めて約12年。
大分県と宮崎県による東九州メディカルバレー構想の、医療関連の大学と企業のマッチングの取り組みの中で樋口准教授とご縁をいただきました。
初めてお会いしたのが平成25年で、研究をスタートしたのが平成29年だったと記憶しています。
弊社は食品の分野は専門ですが、医療現場や介護施設などでも微酸性電解水を役立てていただくことができないかと考えていた時に先生に出会いました。
ご専門と研究について
樋口先生のご専門についてお聞かせください。
助産学が専門です。今は、大学院で助産師の資格取得を目指す学生さんたちの教育を中心に行いながら、赤ちゃんの皮膚(スキンケア)の研究に取り組んでいます。
助産学に進まれた理由
学生さんの教育にも携わっていらっしゃるんですね。
私は大学の4年間で看護師と保健師の資格を取得して、卒業後は臨床で2年間看護師として現場で働きました。
元々人と接することが大好きだったので、「その人らしく生きぬくことを支援したい」と、自宅で亡くなる方を看取る終末期の訪問看護師を目指しました。
看護師として、たくさんの方の人生の貴重な時間を共有させていただく中で、その人の歴史が最期の瞬間を作ると感じるようになって、「人生のスタートから”いのち”を支援したい」と、大学に戻って助産師の資格を取りました。
その後、臨床助産師の仕事を離れて教員になる時にはすごく悩みました。でも、自分一人でできることは限られてるけど、学生さんを育てて、助産師の仲間として社会に10人巣立ったら、10倍のパワーになるって考えたらすごく素敵な仕事だなと思ったのがきっかけで教育の道に飛び込みました。
私に大学の教員にならないかと声をかけてくださった恩師が、「助産も教育も一緒よ」っておっしゃったんです。今は、臨床で赤ちゃんをとりあげて未来を担う人を育てる事も、教育で学生さんたちを育てる事も、『未来を創る仕事』っていうところに関していえば本当に同じだと思ってやりがいを感じています。
なので一番最初に鳥越社長とお会いした時、「子どもたちのために何かできることを全力で応援したい」とおっしゃったのがすごく印象的で、お金儲けじゃなく、夢を大事にしたいんだって。企業さんがそういった話をされるのが私の中ですごく新鮮で、未来を創る仕事という点では共通の部分があると思って嬉しく感じたのを覚えてます。
そうですか。それは大変ありがたいです。
弊社は石灰岩に恵まれた津久見市でその石灰を原料とした乾燥剤を作っていますが、微酸性電解水アクアサニターは、津久見の石灰岩の地下深くから採取される地元の水でできているんです。
他の地域で作った微酸性電解水と比べるとミネラル成分が突出していて、この地の利、恵みを生かして役にたてばと思いました。
熊本で地震が発生した時、北熊本病院さんで水道が使えなくなったと聞き、水道水の代わりに使ってもらおうとアクアサニターを届けました。衛生管理がままならない事態は命に関わりますから。
そういったことも含め、樋口先生に微酸性電解水を安心して一般の方や医療の現場でもお使いいただくため、データや論文で根拠を示す部分のバックアップをさせていただけたらと考えております。
赤ちゃんの皮膚の研究のきっかけ
赤ちゃんの皮膚の研究をされているとのことですが、皮膚に着目されたのはなぜですか?
日頃意識することは少ないですが、皮膚は人の体の中で一番大きくて唯一目で見える臓器なんです。赤ちゃんの肌はデリケートで敏感なので、環境の変化や刺激でトラブルを起こしてしまうこともあります。
私も一人の親として子育てする中で、赤ちゃん用のスキンケア剤の中から、何を選択すれば良いのか分からず悩みましたし、私と同じように不安を抱えている保護者の方がたくさんいらっしゃる現実も知りました。
生後1か月までの赤ちゃん(新生児)は産婦人科で診ます。でも、スキンケアに関する情報提供は十分ではない・・・そのことに気づいた時、これは助産師が取り組まなければいけないんじゃないかと思いました。
それに調べていくと、赤ちゃんの時の皮膚状態とアトピー性皮膚炎や食物アレルギーが関係していることが分かってきました。将来、みんなと同じお菓子が食べられるとか、家族と同じものが食べられるとか、毎日の幸せが当たり前になるように、赤ちゃんのスキンケアについてもっと知りたい!と思いました。
研究の柱、大切にしていること
樋口先生のお話をお聞きしていると、命の始まりから最期まで、一瞬一瞬「その人が最善でいられる、最善の選択ができる」ことを大切にされているように思いますが、大切にされていることはございますか。
ウェルビーイングという言葉があります。
「心身ともに健康で幸福な状態」という意味なんですけど、一時的な幸せを意味するハピネスとは違って、ずっと続く幸せです。生活は続いていくもので、その先にある“ウェルビーイングな未来につなげる”ということを大切にしています。
素晴らしいですね。
私たちも物心両面の幸せをというのが理念にあるんですけど、体も当然ですけど、マインドもないと必ず影響してきますから。
微酸性電解水との出会い
最初に私どもから微酸性電解水を紹介させていただいた時、どんな印象を持たれましたか?
最初お話をうかがった時は、除菌や消臭効果があって、しかも安全。そんな水があるのかと驚いたんですけど、本当かな?とも思いました。なので、それがどういったメカニズムで起こっているのか、効果や安全性について研究で明らかにしませんかと提案させていただきました。
私どもにとっては、願ってもいない提案をいただいたと思っています。
研究内容について
具体的な研究内容についてお聞かせいただけますか。
まずは、既に販売されてる市販品の濃度の微酸性電解水を人に長期間噴霧しても皮膚状態に問題がないか評価を行いました。この試験では科学的に皮膚内部の炎症反応やタンパク質のサイトカインの発現量まで調べて、1週間皮膚に噴霧しても問題がなかったので「微酸性電解水の一週間反復噴霧がヒト皮膚に与える影響 〜二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験〜と題した一本目の論文を出しました。
次に、ヒトの皮膚細胞を使って100ppmまで濃度を上げて、長期間(3時間)浸して細胞レベルでどれぐらいダメージがあるのか試験を行いました。
濃度を変えて試験を行ったということですね。
そうです。やはり濃度依存的に細胞ダメージは認められますが、75ppmまでは皮膚影響が少ないと結論し、論文「微酸性電解水の線維芽細胞に対する細胞障害性の評価」を出しました。
現在は、皮膚以外、例えば粘膜などへの応用可能性を探るために、低い濃度での消毒効果について、さらに細かく検証を進めています。
濃度の違いによる安全性や効果がわかることで広がる可能性
濃度の違いによる安全性や効果がわかると、使う人が理解した上で、用途や場面にあわせて使い分けができるということでしょうか。
はい、そんなイメージです。
例えば、石鹸で手洗いした後であれば手荒れしない程度の低い濃度、外仕事やライフラインが閉ざされた場所での除菌・殺菌効果が必要な時には高濃度というような。
その他にも、感染予防対策としてはターゲット(細菌やウイルス)の特性に合わせたり、年齢やそれぞれの肌の状態や生活に合わせたりして、適正な濃度を選択することで、より安全に安心してお使いいただけるようになるかと思います。
病院や高齢者施設などで勤務されている方が、アルコールで手荒れするといった話をよく聞くのですが、アルコールとの使い分けのような可能性も出てきますか?
そうですね。病院で使うとなるとハードルは一気に上がりますが、一つ一つ根拠を明らかにしていけば、医療現場でも選択肢の一つに上がる可能性はあると思います。
アルコールはアレルギーで一定数使えない方もいらっしゃいますし、揮発した時の吸い込みなどで喘息を誘発することもあるので、適切に選択ができるように微酸性電解水の科学的根拠の検証と情報発信をしていくことが大切だと感じています。
本日はありがとうございました
微酸性電解水の可能性をさらに感じることができました。また、樋口先生の研究や教育への取り組みの根っこに触れることができたことを嬉しく思います。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。
取材日:2022年8月1日
聞き手:鳥越繁一
取材協力
大分県立看護科学大学 専門看護学講座 助産学研究室
准教授 樋口 幸 様
大分県立看護科学大学卒業後、大分県済生会日田病院で看護師として勤務。大分県立看護科学大学大学院で助産師資格を取得し、葛飾赤十字産院で分娩室とNICUで勤務。その後、母校で教育に携わりながら2020年博士(健康科学)取得。2020年度より現職。現在は、助産師として週1度の臨床勤務を活かしながら、教育・研究に励む日々を送られています。
大分県大分市廻栖野2944-9
https://www.kurumeunsou.co.jp/
電話:097-586-4300